企業経営の目標に対する課題整理を/ビジョンとセルフコーチングのすすめ「経営者はスポーツ選手と似ている」
ビジョンについて
「リゾート運営の達人」は星野リゾート、「アジア50億人の心を動かす企業へ」はイオンモールのビジョンです。
ビジョンとは、企業のあるべき姿、未来像を示します。
経営理念に某づいて未来像をビジョンとして発表すると社員の判断のベースとなり、その下の階層の企業戦略(どんな客に、どんな機能を、どんな技術で戦うか)や経営計画も立てやすくなります。
ビジョンが夢のままで終わる、企業ビジョンが絵に描いた餅となることはよくあることです。
一方、ビジョンを描かなければそこに到達することはありません。「プロ野球選手になりたい」と想像したことがない人は、プロ野球選手にならないのです。
コーチングとは
似た言葉にティーチングがありますが、ティーチングは教える方が主体となって知識・情報を伝え、答えは指導側にあります。
コーチングは相手の頭の中に答えがあり、成長を促し、導くことを目的としています。
コーチの語源は、先進的な馬車を作っていたハンガリーのコチという街で、「目的地に運ぶ」馬車になぞらえ家庭教師をコーチと呼ぶようになりました。
スポーツ選手のコーチが有名になり、スポーツ心理学・組織行動論の学者が研究として取り上げ、ビジネスコーチング市場が拡大しました。
アメリカのビジネスコーチングの市場規模は1兆2,700億円(2021年)となり、GAFAのカリスマ経営陣はコーチングスタッフがついていることを公表しています。
早く目標達成するために、現状を客観的に把握し、成長を促す第三者がコーチなのです。
GROWモデル
コーチングの手法の一つで、John Whitmore氏(元プロカーレーサー)が提唱した目標達成モデル「GROWモデル」(それぞれの頭文字を取って)を紹介します。
Goal「ビジョン・目標設定」
達成したい目標を掲げます。
ビジョンというくらいですから、出来るだけ実現した時のことを映像のように想像できる目標をお勧めします。
ちょうど1年後に逹成したい目標を掲げることが、私は一番コントロールしやすいと考えています。
Reality「現状把握」
目標との差分を把握します。
現在の状況とビジョン目標にはどんなギャップがあるのかを理解、把握、分析します。
Resource「資源発見」
目標達成のために使える資源を洗い出します。
意欲ある人材、協力者、目標達成のために使えるお金や設備、製品、情報、技術力のことです。
Options「選択肢の列挙」
出来るだけたくさんの選択肢を列挙します。
目標達成のために必要と思われること、選択肢の中でうまくいかないこともあると考え、あらゆる可能性を探ります。
Will「達成の意志」
目標を逹成するには、困難が立ちはだかります。
今までと違うことをやろうとするので反発も受けるでしょう、その覚悟があるかどうかを確認します。
GROWモデルについて
GROWモデルに当てはめると目標達成の手順がはっきりします。
日常のさりげない会話の中で質問をし、相手の頭の中を整理し、目標達成に向かう行動を促すのがコーチの役割です。
日本の経営陣の中にもコーチをつけ実践している人はいますが、日本人の特性なのか公表していない人の方が多く、浸透しているとは言えません。
コーチは相手との信頼関係も築かなくてはなりませんが、信頼を築くプロセスを必要としないのが次に紹介するセルフコーチングです。
セルフコーチングのやり方
セルフコーチングは、自問自答でGROWモデルを埋める方法です。
私は一年後、どうなりたいのか、何をどこまで完成させたいのか、あるべき姿は何か
その一年後に対して、今はどういう状態か、困っていることはなにか
協力者はいるか、使えるお金はいくらか、使える物はないか、どこから情報を得るか、さらに必要な人・金・物・情報はないか
目標を達成するには、どんな手段が考えられるか、もしもそれが失敗したら、他に手段はないか
目標を達成したい気持ちは本物か、結果を手に入れるまでに予想される困難は何か
では手始めに今日は目標のために何を始めるか
今日の自分は、何のためにここにいるのか
目標と計画が出来ても安心せず、日々自分に問いかけ、今日一日は、常に一年後の自分と結果を手に入れるための時間としましょう。
秋田県よろず支援拠点にご相談ください
企業経営の目標に対する課題整理等のご相談は秋田県よろず支援拠点(電話番号:018-860-5605)にお気軽にご相談ください。
お待ちしております。
このコラムの執筆者
中小企業診断士(経産省登録)
渡部 信子(Watanabe Nobuko)1965年生まれ
主な経歴
運送会社の経理を経て25歳で占い館1999起業、55歳で廃業。秋田JCに所属したことをきっかけに研修講師資格を取得。中小企業診断士試験には3度目の受験55歳で合格。秋田県よろず支援拠点コーディネーター、秋田商工会議所商工調停士、秋田事業承継・引継ぎ支援センター専門員を務める。